2004年11月01日

笑の大学とイラク人質問題

日曜日、三谷幸喜脚本の「笑の大学」を見る。
これは、演劇界ではとても有名なお芝居である。
だから、演劇オタク的に面白さを分析もできるし、
ウンチクを語ることもできるのだけど、
だが、このblogには、立ち位置がある。

「私達の生活と芝居はどう結びつくのか」

奇しくも、映画館から伸びる列に並んでいる間に、
イラクで人質になっていた日本人が殺害されたという、ニュースが入ってきた。
この映画とこのニュースを、どう結びつくのか、考えてみたい。
ちなみに、ネタバレがあるので、注意するように。

笑の大学は、
第二次世界大戦の頃の浅草の警察署を舞台にしている。
言論統制のため、お芝居の台本に検閲が入るというご時世、
この度、新しい検閲官が同署に配属された。
この人が、笑いが大嫌い。
戦時中にくだらない喜劇なんか上演するとは何事か!
そこに、一人の喜劇作家。
検閲官のいくつもの無理難題に応じて、台本を修正していく。
しかも、その無理難題は、上演をさせないための嫌がらせだったはずが、
検閲官自身も、喜劇というものの魅力に気づき始める。

私は、この映画に、イラク人質問題において、
どうすれば、人質が殺されないで済んだのか、というヒントを見たい。
それは、時間と空間の共有は、主義主張の対立を超越するということだ。
笑の大学では、喜劇作家と検閲官は、
台本の修正をとおして、濃密な時間と空間を共有していくのだが、
最後まで、それぞれの主義主張に変化はない。
検閲官はいつまでも、「お国のため」という思想のままなのである。

大切なことは、主義主張にズレがありつつも、
二人の心がリンクするということなのだ。
だから、この映画を、戦争反対に検閲官が転向したととるのは間違いである。
検閲官は、いかに喜劇作家と仲良くなろうと、官憲のままである。
戦争を翼賛する人間のままなのである。
でも、だからこそ、主義主張にズレがありつつ、二人の心がリンクするところが、
時間と空間の共有は、主義主張の対立を超越するところが、素晴らしいのだ。

イラクのレジスタンスによって、日本人というだけで殺された人間がいる。
これは、主義主張だけで、一人の人間が殺されたということだ。
でも、主義主張にズレが、いくら合ってもいいのだ。
時間の共有、空間の共有を、我々は、誰とどこでどうとっていくのか、
そこが問題なのだと思う。
posted by 鈴木厚人 at 11:20| Comment(2) | TrackBack(4) | 映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
送信ミスで3回も投稿してしまいました。削除しておいてください!また訪問したときはよろしくお願いします
Posted by シュン at 2004年11月02日 00:41
>シュン さん
トラックバックの件、修正しました。

三谷幸喜の「脚本」に対する考え方とその徹底ぶりは、本当に尊敬に値すると私は思います。たとえば、ほとんどの戯曲賞を三谷幸喜は辞退してます。これは、「脚本」は芝居になって、はじめて完成するというのと、「脚本」は作家一人が書くものではなく、役者やスタッフのアイディアも加わって書けるものという、彼の思想があるからです。岸田戯曲賞も何度か辞退しているようです。本当にすごいですよね。
Posted by 鈴木厚人 at 2004年11月04日 01:08
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