2005年03月26日

"ポスト*労苦の終わり"の美味しい食べ方

私は、演劇好きコアピーポー(People)なので、
一行レビューというページを毎日チェックしている。
http://dx.sakura.ne.jp/~nnn/play/itigyo/itigyo.cgi

そこでの、「ポスト*労苦の終わり」の感想を読んでいると、
少しずつ悲しくなっていく。なぜだろう?
「ポスト*労苦の終わり」の感想は賛否両論あり、
それ自体は、すごく健康的であると思うのだけど、
感想の書き手達には、自分が感じた面白さに対して、
ある種の普遍性を求めているお馬鹿さんがとても多くて、
村上春樹的に言えば、「やれやれ」なのである。

日本人のように、可視的でない階級社会で生きてる人々では、
普遍性などは到底信じられないがゆえに、
自分の立場を明らかにしてから議論を進める、
なーんてコミュニケーションの作法があることは、
理解できないんだろうね。
結局、好き嫌いでしか判断できないなんて小学生か。

私は、「ポスト*労苦の終わり」を面白く見た。
なぜか?理由はいくつかあるが、
私が面白く見た理由からこの作品を分析しても、
このレビューが面白くなんないだろうから、
嫌いだと思ってしまう人の気持ちを、
前述の、自分の立場を明らかにしてから議論を進め、
ながら分析でもしてみましょうか。

@ベジタリアンは、犬は食べない。
まず、あなたが演劇に何を求めているかを、はっきりさせましょう。
チェルフィッチュのお芝居は、
演劇とは○○であるというのを再定義するような演劇です。
ですから、演劇とは○○であるというような、
強い固定観念を持っている人にとっては、
ベジタリアンが、韓国の犬料理を見て、
犬は食材であってはいけないと世界の中心で叫ぶような事態になります。
そして、それはとても自然なことです。
ベジタリアンが犬を食べないことを、誰が責められるのですか?

A美味しい料理のお皿は美しい。
セットが美しく、また豪華であること。
客席が快適であること。芝居の内容以外にも、
こういうことは、とても大事です。
STスポットは、お世辞にも観客にとって快適な劇場ではない。
なぜなら、とても狭い。タッパもそこそこ低い。
だから、1時間以上(人によっては30分で)芝居を見ていると、
お尻が痛くなってくる。集中力も落ちる。
そして、「ポスト*労苦の終わり」もどんな演出意図であるにしろ、
セットは安ぽく見えました。とても天皇陛下はお呼びできません。
美しいお皿が、料理を美味しくすると思っている人には不似合いです。

B不倫をするとワインが美味しくなる。
恋愛のゴールが結婚だとは思えない、という言葉が一昔前化して、
誰もが結婚後の夫婦外恋愛を楽しんだことがある今日この頃、
結婚という牢獄を経験して、シャバを楽しんでいる人と、
結婚という牢獄を経験せずにシャバを楽しんでいる人では、
大きな隔たりがあることは自明の理。
料理もお芝居も、その結婚の苦味を楽しんで味わう時代になっております。
ゆえに、ある種のお芝居もしくはお料理では、
結婚生活の困難さを経験した上での結婚ロマン主義が、
求められ、かつ消費されております。

結婚ロマン主義とは、真実の愛、ど真ん中で貫く愛を結婚相手に求めること。
でも、前述したように、そんなものはあるはずがない。
多くの場合、結婚なんて主体的選択ではなく、
環境的もしくは状況的選択でしかありえないし、
そもそも真実の愛なるものがありえない。
だからこそ、真実の愛がそこにあるかのように振る舞うことが、
とても大切なコミュニケーションとなる。
そのことを経験している人にとって、
結婚の中にありそうにないものをあえて求める、
人々を描いた「ポスト*労苦の終わり」は、
甘く、そして苦く感じられるのである。

つまり、「ポスト*労苦の終わり」は、
どんな恋愛をしてきたかによって、見方が変わるという、
個人的な経験にシンクロしやすい芝居なのである。
posted by 鈴木厚人 at 05:13| Comment(3) | TrackBack(1) | 舞台レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一行じゃ好き嫌い程度の感想しか書けないのでは?
小学生レベルの単純な感想が一番的を射ていると思いますけどね。
観に行くかどうか迷っている時の参考にするのに評論家ではない客の生の感想を読んで判断するために私などは使っていますけど。

客は評論家ではないし料金払って観に来ている以上満足できなかった心情を率直に語りたくなるのは当たり前ではないですか?感想なんてそもそも個人的なものじゃないですか。小学生レベルの。

>自分が感じた面白さに対して、ある種の普遍性を求めてるお馬鹿さんがとても多くて、

それは鈴木さんなのでは?

Posted by 84 at 2005年03月26日 11:55
>84さんへ

コメントありがとうございますね。
僕は、普遍性ではなく相対性を求めてるだけです。
料理にたとえたから、誤解されてしまったようだけど、
恋愛にたとえたら、わかりやすいかな?

一行レビューの感想を読んでいると、
俺が好きじゃない女はいい女じゃない、
的な感想が多いんですよ。
そうじゃないだろうと。

彼女は口下手だけど、
両親の話をする時にとても魅力的な笑顔を見せる、
とか、

多少、ファッションセンスが悪い彼女だけど、
話すと、自分が知らなかった世界が広がる、
とか、

彼女の料理を作っている時の後姿が、
とても素敵だ、でも台所はメチャクチャになる、
とか、

あなたが、その芝居を好きか嫌いか、
どんなコミュニケーションを経た上で、
感じたの?ってことなんだよね。


>一行じゃ好き嫌い程度の感想しか書けないのでは?

それはあると思います。でも、
携帯のメールで女の子を口説く時って、
結構、短く鋭く書くでしょ?
メール好きな人だったらできると思うんだけど、
そんなエネルギーを演劇には使いたくないって、
話になっちゃうのかな?
Posted by 鈴木厚人 at 2005年03月26日 13:18
この方は一行レビューについてきちんと言及されてます。

なるほど、と納得させられる文章です。そう感情的にならずに参考にされてはいかがですか?

http://natsui.cocolog-nifty.com/

Posted by at 2005年03月27日 04:08
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Excerpt: ポスト*労苦の終わり  チェルフィッチュは、去年5月の『三月の5日間』で岸田...
Weblog: しのぶの演劇レビュー
Tracked: 2005-04-04 22:32
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