2006年04月21日

青空美人「怪力」に、運命という名のファンタジーを見る

吉祥寺シアター(東京・吉祥寺)は、
2005年5月21日にオープンした、新しい劇場である。
吉祥寺駅から徒歩6分の距離にあり、
外観内装ともに、いわゆる小劇場のアングラぽさのない、
清潔で整った印象の劇場だった。

舞台も、客席キャパ200人弱、相鉄本多劇場くらいの大きさだが、
間口はそこそこに、タッパと奥行きがやたらある。
なにせ、演劇専用の劇場だ。

ピアノを置けるスペースを確保して、
あとは全て客席という音楽用の劇場
(パルテノン多摩の小ホールみたいな)に比べ、
土地効率の優先順位を落とさないと、
演劇専用の劇場は建てられない。
この劇場の設計にはそうした志が感じられる。

さて、そこに知り合いの役者が出ているということで、
芝居を見に行った。

「怪力」は、洪水伝説を縦糸にした、
3つのエピソードのオムニバスである。

洪水伝説をテーマにしたものに、「事件」があった。
THE SHAMPOO HAT「事件」について
http://inzou.seesaa.net/article/4865155.html
「事件」は、
自分の本来いるべき場所は、ここではないどこかである、
世界違和感系の物語だと思ったが、
「怪力」は、
そういうこの世界の外を志向するのではなく、
手の届く範囲の人間関係に右往左往するという意味で、
落語?ぽい話だ。まあ、能天気な明るさはないんで、
長屋の住民のためではなく、
近代西洋インテリのための落語って感じかな。

第一のエピソードは、昔、はるかかなたの砂漠の国で、
洪水が迫る中、離婚したり、不倫したり、権力闘争したりする。

第二のエピソードは、日本で、
水門のある公演で、普通の人の普通の世間話。

第三のエピソードも、日本で、
これは、とある芝居のオーディション。

面白いのは、
第一のエピソードの登場人物が、
第二、もしくは、第三のエピソードの、
誰かに生まれ変わっているという、構造。
手の届く範囲の人間関係に、
右往左往させられていたように見えて、
実は、もっと大きな何かに動かされていることに、
観客が気づく。
つまり、結局、この世界の外を志向する物語だったのである。

そして、第三のエピソードのオーディションで読まれるのは、
第一のエピソードの台本なのである。
第一のエピソードで、不倫関係だった二人が、
第三のエピソードでは、別の人間になっていて、
台本の読み合わせで、初対面であるのに、
不倫関係を演じなければならず、しかも妙にしっくりきてしまう。
そのしっくりさに、違和感を感じ、また戸惑う。
(観客は理由がわかってるが、本人達はわからない)

まあ、手塚治虫の「火の鳥」の趣向って言えば、
それまでなんだけどさ、
運命という名の、輪廻のファンタジーは面白いと思った。

P.S.
小林薫さんが来ていた。
痩せすぎなんじゃないかと思った。
posted by 鈴木厚人 at 10:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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